初めてバンドを始めた頃、レコード屋で好きなバンドのCDが面出しされていた光景を今でもよく覚えてる。
こう思った。
『音楽って凄いな。いいアルバムを作ったら、それを気に入ってくれたお店の人がお客さんに薦めてくれるんだな』って。
赤の他人をそこまで動かすなんて、音楽はなんて素晴らしいんだって。
俺もお店の人が自信を持って薦められる様な音楽を作ろう。彼等が良いと思う音楽はきっと本物だろうから。
そう思った。
だけど、いつしか自分もCDを出す様になって、それだけじゃない事を知った。
それはお店で大きく扱って貰うにはお金が掛かるという事。
今にして思えば、青臭いだけだったんだと思う。でもそこにはそう思わせてくれる、お店の人の熱がこもった、読んだだけで胸がワクワクする様な手書きのポップがいつも飾ってあった。
色とりどりのコメントや看板。そんなポップで自分のCDをいつか紹介して貰うのが夢だった。
『ATATAからお願い』と題して、販売促進費ゼロで全国のレコード店のスタッフに『JOY』への協力を募った。
非難されてもしょうがいないし、それくらい生意気な告知をしてる自覚もあった。
『アルバムを出すから無償でお客さんに薦めてくれないか』と。一言でいえばこういう事。
誰一人手を挙げてくれなくても、それが当たり前だし普通だと思った。
初めてバンドを始めてから、20年以上経ってる。それくらいは大人になってるつもりだった。
それでも心の何処かで音楽の力だけを信じてみたい自分がいて、新しくまたCDを出す事になって、分かってたつもりだった心がまた騒ぎ出した。
そして本日、『JOY』の先行販売(フラゲ)が開始されました。
協力を募った報告の代わりに写真を集めたので貼っておきます。
俺の言葉なんかより、今回俺達が受けた好意や善意を雄弁に語ってくれると思うから。
ご協力頂いた全国のレコード店の方々、ありがとうございます。心から感動してます。
きっと、この借りは大きいと思う。宣伝費よりきっと。きっとお金より大事な物。
明日からよろしくお願いします。お願いして本当に良かったです。
もしもタイムマシンがあったら、あの時のレコード屋にいる自分に会いに行って、肩を叩いて親指を立ててやりたいと思う。
『これから色々経験するけど、レコード屋の人達は無類の音楽好きだから、信頼して大丈夫だよ』って。