本日、8/8(水)。晴れて我等がスパイク・シューズの6枚目のアルバムが発売されました。

おめでとう。本当におめでとうございます。

忙しいスケジュールの中、よくぞこんな傑作を作り上げられたなと驚いています。

ここ何年か、彼等の大事な局面に関わった仲間の一人として、何故か責任感に駆られてしょうがないので(笑)、勝手にブログを書く事にしました。

この謎の責任感はアルバムを実際に手に取ってクレジットや歌詞を読んだ人なら分かると思います。

思い返せば6/23(土)の仙台の彼等主催のイベントでこのアルバムが先行発売されて、そこで手に入れた俺達は本当に毎日の様に聴いて来たし、その魅力は多少なりとも理解してるからこそ、先に手に入れた立場として、これから手にする人に向けてこのアルバムを分かりやすく解説出来たらなぁなんて。

というか知ってる人にも知らない人にも語りたくなるアルバムっていうか。

ちょっとこれ凄ぇぞって。

切り口は沢山ある。今まで以上に彼等の魅力である、音楽的なグローバルさは突き抜けてるし、各パートの表現もネクストレベルに達していると思います。

謂わば前作『spectriddim』で到達した地平の更に奥の奥の核(コア)に迫ったというか。

分かり難いですかね(汗)。

とにかく猫の目の様に変わる表情一つ一つに対して確信っていうか、迷いが一切ないんですよ。どの曲も確信に満ちている。

多分一曲づつ解説した方がいいっぽいのでやってみますね。それくらい6曲全部が違う。

①serac
教会のパイプオルガンの様な荘厳なSEから始まって、始まってみれば6分半弱があっという間に過ぎていく、スパイク・シューズの新たな物語の幕開け。ここでは時間や距離の概念が取り払われ、まるでテレポーテーションの如く世界を瞬間的に移動していきます。ヨーロッパからアラブを経由して南米に辿り着いた様な。スラッジ、ドゥーム、メタル、ハードコア、サイケデリック、ダブと、エクストリームでエクスペリメンタルな音楽用語を全部詰め込んでやっと足りる的な。まさにアルバムのタイトルを表明する様な曲だと思います。『これからはこれ』みたいな。

②crossbreed
ここに来て彼等の十八番、怒濤のハードコアナンバーが畳み掛けます。今回のアルバムを通して統一されたテーマがあるとしたら、それは『重さ(ヘヴィーさ)』にある様な気がします。速くて短い曲でもしっかりと『重い』。重心が低いというか、腰が座ってるというか。『横綱鋲靴、今場所も優勝』といった感じ。その重さの上で奏でられる直線的な船木リーダーのギターと龍司君のエフェクティブなギターが音像に広がりを持たせてると思います。

③砂の城
引っ張りに引っ張った叙情的なイントロにシンクロするレイジング・スラッシュ。まるでバッド・ブレインズのビッグ・テイクオーバーを聴いた時の様に、待たされた上で歪みまくって刻みまくるギターがこんなにも感情を昂揚させるのかと。曲の全編を通してうねりまくる剛君のベースに思わずウォーっと声が出ます。またこの曲をもって、このアルバムにおける彼等のハードコアバンドとしての側面は一旦大団円を迎えます。そしてここから怒濤のトランスフォームが開始されるという(続く)。

④dry fang
今作の俺一推しの曲です。というか勝手に俺達に向けて作られた曲だと思ってます。まずは歌詞を読まないで聴いてみて下さい。このアルバムを手に入れて、仙台のライブから帰宅した6/24の夕方に初めてこの曲を聴いた時の体の震えはきっと一生忘れないと思います(勘違いじゃない事を祈ります)。解説するならば、以前より彼等とレゲエとの邂逅は当たり前の様に行われて来ましたが、ここに来て七色の声を持つ、ヨネ君がまた新たな歌唱法を手に入れています。後半で取られた手法はルーツレゲエというより、完全にダンスホールレゲエのディージェイ(レゲエの場合はマイクを持つMCの事をDJという。ちなみにレコードを回す人はセレクター)のそれで、横浜出身の俺はルード・ボーイ・フェイスやパパ・Bやファイアー・ボールを連想したりと、ハイブリッドなバンドのアレンジとも相まって、まったく新しい音楽が生まれたと思います。終わったと思って再び始まるアウトロもクール。嗚呼、なんてカッコいいバンドなんでしょう。

⑤落 日
まずはエクストリーム・ノイズ・テラー好きなセイちゃんのRAWなブラストビートに息を飲みます。そして目まぐるしく変化する性急なビートチェンジの葛折り。ヨネ君のボーカルはあえて極端なトーンチェンジはせず、ストレートに攻め上げています。わざと荒く篭った音質で録音されたギターのオブリや、ワウを活用し弾きまくるギターソロも彼等のルーツが垣間見えて聴いてて楽しいと思います。ラストの曲に向け、ジェットコースターの如く加速し、最後はウォータースライダーでバシャーン。もうこの時点でずぶ濡れですが、次に控えるラストの曲が秋の夕暮れの様に優しく乾かしてくれるから大丈夫です。

⑥耳鳴りの丘
まさかラストを締め括る曲がオーガニック且つゆったりとした直球のレゲエだとは思いませんでした。これまでの曲で多く聴かれたリズムチェンジもありません。一貫して聴かれるのはフィッシュマンズやボ・ガンボス、もっといえばこだま和文の旅情や慕情。生楽器を一切使用してないのにミシュカやナッティーの様なアコースティックな肌触りすら感じます。ここまでやるかっていうか、これが今のスパイク・シューズなんでしょうね。というか一聴して最初のseracと、この耳鳴りの丘を聴いて、誰が同じバンドだと思うでしょう。表現したい事の『核心』に向かう。今の彼等にとって、ここが一番重要なんだと思います。

静と動が曲中、曲別に混在し、同居する。そしてそこには絶対的な確信が存在する。その確信が故に、二周目を聴く頃には聴き手もそれを既に受け入れている。まるで振り子理論の様に、極端な表現だからこそ、どんなタイプの曲でも強烈な印象として残ってしまう。改めて凄いバンドだと思います。

長くなりましたが、先に聴かせて貰ってた役目として、思い付く限りに解説してみました。

いつもだったら、事前にああでもないこうでもないと勝手に宣伝してたと思うんですが、不思議と今回はそうしようと思わなくて、誰もが手に取れる状況になって、初めてちゃんと文章にしようと、黙って聴きまくってた次第です。

稚拙な解説っていうか、感想文かも知れないですが、これを読んでくれた一人でも多くの人がこのアルバム、ひいてはスパイク・シューズというバンドに出会ってくれたらなと思います。

スパイク・シューズというバンドに出会う事で、きっと音楽の聴き方が変わると思うんです。もっといい風に。

良かったら是非聴いてみて下さい。

奈部川光義(SDCHC関東支部)

spike shoes 『henceforth』
発売:2018年8月8日(水)
価格:1,800円(税込)
品番:TAXE-0003
released by Tiny Axe

収録曲:
1. serac
2. crossbreed
3. 砂の城
4. dry fang
5. 落日
6. 耳鳴りの丘