朝から愚図ついていた空は、練習が終わった頃には太陽が顔を出していた。丁度2年前と同じだ。

そして午後には暑いくらいに快晴となった。2年前以上に。

何から話そうかな。澱みのない、心地の良い空気に包まれた一日だった。本番が始まるまで、緊張感はあったけど、それも含めて心地良かった。早くライブがしたくてしょうがなかったから。

2018年9月22日。渋谷。2年前から一回り大きい会場にいた。

もちろん主役は自分達じゃないけど、成功させなきゃいけないって気持ちだけは2年前と同じで。

不思議な縁だなと思った。



何故、俺達が再び呼ばれたのか。そんな事を考えながらリハーサルをしていた。やるべき事はもう決めてあったから、イメージしていた風景を、実際目にしてる寸法に照らし合わせるだけっていうか。絵と写真を合わせる感じ。

4年前に、『JOY』を作るきっかけをくれたバンドの前で、それを現場で磨き上げて来た状態で、正々堂々と演奏する。

変化球はなし。今ならそれが出来る。

いつもの計算だと本当は7曲演奏出来る時間を貰っていた。だけど今日はどうしてもこの6曲を、この順番で披露する必要があった。



終わってみれば、大きな舞台でも緊張せず、その大きなステージを生かした、今の時点で表現し得る、自分達らしいライブが出来た気がする。

観てくれた沢山の方々全員にそう思って貰えたかは分からないけど、それでもそう思う。そして今日を糧にして、これからもっと良くなる。

KEMURIと出会って20数年。何度もフックアップして貰って、やっと初めて少しだけ役に立てた様な気がした。1ミリだけ。

心地良い疲労感と達成感に包まれて、煙草を吸って着替えてたら、KEMURIのライブが始まった。

KEMURIの時だけは、この場所から観るのが好きで。皆さんのこの背中が好きで。ファンの姿を見るのが好きで。

何ていうか、熟練の職人の手元が一番良く観れる場所っていうか。それを幸せそうに味わうお客さんの表情も見れる。

KEMURIのライブはまるで一度に百人組み手をしてる合気道みたいだ。

最前列で観てる人、踊ってる人、暴れてる人、穏やかに観てる人、後ろで腕を組んでる人、椅子に座って観てる人。その人達それぞれの呼吸にピタッと合わせる。

誰も置いて行かない。それぞれの踊り方に、それぞれにKEMURIっていうパートナーが付いて、手を取り、時にリードしながら、その人のペースに合わせて一緒に踊ってくれる。

でもそりゃそうか。みんなKEMURIが好きでチケットを買って、時間を使って集まってるんだもんな。

いや、違う。そういう事じゃないんだ。この空間はもっと魔法に満ちている。多分それは信頼っていう名の愛で。そう、愛があった。

この背中からまだまだ沢山学ぶべき事がある。

『Ato-ichinen』を何年も繰り返して来て、彼等のあと一年は俺達のあと一年よりもきっと何倍も重い。コバケンさんに誘われて、噛み締める様にあと一年ってコーラスした。あと一年、あと一年。

『I Love You』っていう名曲が俺達に送られて、フミオさんの口から何度もATATAって言って貰えた。

彼等が演奏するオーセンティックなスカや、ロックステディや、ルーツレゲエが好きで。ただでさえ嬉しいのにステージの袖でずっと踊ってた。

彼等はSKA PUNKっていうジャンルを自負してるけど、ここにいるファンにとって、それはもうどうでもいい事なんだろうな。KEMURIってバンドと一緒に歳を重ねて来てる。人生にKEMURIの音楽が寄り添ってる。何だかそれが物凄く羨ましく思えた。

そうだ、KEMURIと俺達の音楽は違うけど、フミオさんから影響を受けた事が二つある。

手にマイクのコードを巻き付けて歌う事。そしてその場で感じた事や思った事をMCにする事。その日、その瞬間でしか話せない想いを自分の言葉で。当たり外れがあったとしても、それが『ライブ』じゃないかって。

結局今回もボコボコにやられた。でも気持ち良かったなぁ。前回は立ち上がるのに相当時間が掛かった。10カウント寸前で何とか立ち上がって、そこからJOYが生まれた。今回は晴れ晴れとしてる。

目の周りの青アザをメンバー同士で笑い合いながら、この歳になってそれを経験出来た事を誇りながら、来月から始まるレコーディングに挑もうと思います。

拝啓KEMURI様。

4年前に頂いたお誘いは、俺達ATATAにとって、大きな転機となりました。そしてその転機は俺達を変化させ、新しい世界へと旅立たせてくれました。

本当にありがとうございました。

旅路の途中でまたお会い出来たらと思います。今度はもっともっと役に立てる様に。その時は必ず。

One Life, No Regret, Along The Longest Way…